これまで発行した定期通信をバックナンバーで揃えてご提供します。
また、皆様からいただきました「ご質問」に対する「回答」のうち、多くの方にお知らせしたいものを選びまして、Q&Aとしてお届けします。
Q&A
- Q3.(会員より)2026.8:食肉製品 サルモネラ属菌試験法の生化学的性状に記載されているONPG試験で使用するディスク(島津ダイアグノスティクス製)が、現在のロットを最後に終売となるといわれております。代替品としてメルク製のものを紹介されたのですが、製品性能に不具合があり輸入が一時停止しております。ビオメリュー社のものも終売になると伺っております。すべての疑わしいコロニーについて遺伝子検査を実施することは難しく、他の方法をご存じでしたらご教示いただけますでしょうか?また、国内の試験法について、ISO法などに合わせて変わっているなどの動きがあれば教えていただければと思います。
- Q1.(会員より)2022.2:食肉製品の成分規格で「クロストリジウム属菌(グラム陽性の芽胞形成桿菌であって亜硫酸を還元する嫌気性の菌をいう。以下同じ。)が、検体1gにつき 1,000以下でなければならない。」とされていますが、1000以下の根拠を知りたい。
- Q2.(会員より)2022.3:「食品衛生検査指針2018微生物篇」183ページにあるMPN法cについては、関係個所の記載との間に明らかな矛盾を感じます。本文、巻末の最確数表、JIS規格K0350-20-10:2001の記載、いずれが正しいのでしょうか。
Q3(会員より)2026.8
食肉製品
サルモネラ属菌試験法の生化学的性状に記載されているONPG試験で使用するディスク(島津ダイアグノスティクス製)が、現在のロットを最後に終売となるといわれております。
代替品としてメルク製のものを紹介されたのですが、製品性能に不具合があり輸入が一時停止しております。ビオメリュー社のものも終売になると伺っております。
① すべての疑わしいコロニーについて遺伝子検査を実施することは難しく、他の方法をご存じでしたらご教示いただけますでしょうか?
② また、国内の試験法について、ISO法などに合わせて変わっているなどの動きがあれば教えていただければと思います。
A3 (2026年8月17日現在の回答です。情報が更新される場合がありますので、ご留意下さい。)
①について
- 現在、ONPG試験用ディスクはSigma-Aldrich (Merk) から販売されています。50枚入り4,900円で、入手可能の様です(8月14日ネットで確認しましたが、詳細はメーカーにご確認下さい)。
- 通常、定型的サルモネラの同定は、TSI寒天とLIM培地での性状確認とO抗原の群別で行われるので、ONPG試験に進むことはそれほど多くはないものと推定されます。
- 通知法では、非定型サルモネラの同定のための追加性状試験として、①オキシダーゼ試験、②クエン酸利用能試験、③VP試験、④ONPG試験、⑤マロン酸利用能試験 が記載されていますが、ONPG試験以外の試験(上記①、②、③、⑤)で、除外される例は多いと思います。
- API 20E(ビオメリュー)やIDテスト・EB20(島津ダイアグノスティック)などの簡易同定キットにはONPG試験も入っており、これらのキットの使用も有用です。公定法にも使用可能であることが記載されています。簡易同定キットの使用については、それぞれの仕様書を参考にして下さい。
- その上で、同定困難な場合には、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、地方衛生研究所等の担当部署にご相談ください。
- なお、TSI寒天とLIM培地で定型的な性状であっても、市販されているサルモネラ診断用血清(デンカ)は代表的なO群のみであるため、それらに凝集しない株も存在します。同社からはサルモネラ血清セットとは別に、研究用試薬としてO群17、28、39 が販売されていますが、これらにも該当しない血清群の菌も検出されることがあります。特に、健康人、爬虫類、野菜等から検出された例が多いと思います。この様な場合にも、上記研究所の担当部署にご相談ください。
②について
-
国内の試験法について、最近新たに発出された通知はないと思います。試験法の動きについては、国立医薬品食品衛生研究所のホームページで「食品からの微生物標準試験法」の情報をご確認頂ければと思います。
https://www.nihs.go.jp/fhm/mmef/index.html - また、「食品衛生検査指針・微生物編」の改訂版も、2027年6月頃の発刊を目指して準備中とのことです。
Q1(会員より)2022.2
食肉製品の成分規格で「クロストリジウム属菌(グラム陽性の芽胞形成桿菌であって亜硫酸を還元する嫌気性の菌をいう。以下同じ。)が、検体1gにつき
1,000以下でなければならない。」とされていますが、1000以下の根拠を知りたい。
A1「食肉製品のクロストリジウム属菌」については、加熱食肉製品(包装後加熱)と特定加熱食肉製品で「1000/g以下」という成分規格があり、加熱後の適正冷却の指標、という意味合いと理解しています。
加熱食肉製品の加熱殺菌条件としては、「製品は、その中心部の温度を63°で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法、又は・・・」、特定加熱食肉製品の場合は、「製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又は・・・」と示されており、原料となる食肉に存在すると考えられるクロストリジウム属菌を殺菌できるような条件にはなっていません。
また保存基準も、加熱食肉製品では「加熱食肉製品は、10°以下で保存しなければならない。」、特定加熱食肉製品では「特定加熱食肉製品のうち、水分活性が 0.95 以上のものにあっては、4°以下で、水分活性が 0.95 未満のものにあっては、10°以下で保存しなければならない。」と示されています。
以上より、「1000/g以下」の根拠を説明することは出来ないのですが、原料となる食肉にはこの程度のクロストリジウム属菌は存在するから、加熱しても死滅できないし、加熱後の冷却と保存はしっかりしていただきたい、ということで暫定的に設けられた数値指標であると理解しています。
また、当時、当該委員会に出席していたが、クロストリジウム属菌の数(1000/g以下)については、黄色ブドウ球菌の成分規格(1000/g以下、非加熱食肉製品)に合わせて設定したと記憶している。
なお、当該改正の内容を解説した文献があります。ここにも明確な根拠までは示されていません。
“食肉製品の規格基準改正について”
Amendment of the Specification and Standards for Meat Productsリップ
楠博文 (厚生省 生活衛生局)
資料名:食品衛生研究 (Food Sanitation Research) 巻43号 7-21ページ
発行年:1993年07月
Q2(会員より)2022.3
「食品衛生検査指針2018微生物篇」183ページには、MPN法cとして0,1,0,0で液体20、固体も20とされていますが、本文中には固体の場合は10倍希釈しているので10倍乗じるとあります。表2-6でa,b,d,eは、10倍されていますが、cのみ10倍されていません。MPN表を見ると0,1,0も0,0,1も同じ2となるためそのように記載されているようにも思えますが、そのことは、どこにも記載されておりません。しかも巻末の最確数表を見ると0,1,0は、2ではなく1.8です。
どうも本文に記されている最確数は、JIS規格K0350-20-10 : 2001の「用水・排水中の 大腸菌群試験方法」の最確数表から記しているのではないかと思われます。5,5,5が指針の表では≧18,000なのに≧16,000になっています。これもJIS K0350と合致します。明らかに記されていることとの矛盾を感じ質問させていただきました。
A2今回ご指摘の箇所は、大きく分けて以下2つの記載ミスかと思います。
① 液体2、固体20とすべきところを液体20、固体20と記載されている(桁違い)
② 巻末のMPN表(生食用かきの規格)と表2-6で数値が違う(1.8と2、1800と1600)
①については、検査指針の旧版(2004年版)から新版(2015、2018年版)に改訂されたときの転記ミスかと思われます。
旧版:液体2,固体20
新版:液体20,固体20
②については、旧版(2004年版)の表をそのまま新版(2015、2018年版)に引用されたのかと思いますが、本文の解説で、新版では生食用かきの規格におけるMPN値の算出法として記載したため、齟齬が生じてしまったように思われます。
旧版:本文でISOのMPN表をもとにMPNについて解説したのち、MPN値の算出手順を示すための事例としてまとめた別の表を記載
新版:生食用かきのMPN値算出法として旧版と同じ表(まとめた表)を引用(ISOのMPN表は本文から削除)
なお、表2-6に記載されているMPN値の2又は≧1,600がJIS K 0350から引用されているのではないかとのご見解については、そのとおりかもしれませんし、以下のような、別の見方もできます。
旧版(2004年版)ではISO 4831のMPN表に基づいて解説されているため、このMPN値を引用したようにも思えます。ここでは、「1.8」と「>1,600」が示されていますので、1.8は小数点以下を丸めたと解釈すれば「2」となり、表2-6と同じに見えます。ただし、旧版ではISOと同様「>」を用いて「>16,000」と記載されていますが、新版では「≧16,000」と「≧」を用いていますので、厳密には異なります。
補足ですが,現在ISO 4831のMPN表はISO 7218を参照するよう記載されています。
なお、MPNを算出する際に利用できる情報がありますので、ご紹介します。
米国EPAの"Most Probable Number (MPN) Calculator"
https://mostprobablenumbercalculator.epa.gov/mpnForm
